紙面ができるまで 校閲記者・渡辺静晴さん

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誤字脱字、事実確認「粘り強く、何度も」 

 毎週、学生記者が取材し、記事にしている「キャンパる」。学生記者の執筆した原稿が、どのような過程を経て紙面に掲載されるのか。15日からの新聞週間に合わせて、毎日新聞社のさまざまなルートを経て読者に届けられる裏側の一部を紹介する。今回、紙面のレイアウトを担当する編集記者の川西もゆらさん(41)、そして原稿の表現や誤りを厳しくチェックする校閲記者の渡辺静晴さん(60)に、それぞれ話を聞いた。


 画面上で編集された紙面は、ゲラ(試し刷り)となり、校閲記者の手に渡る。誤字脱字の修正を行う「校正」の作業だけでなく、事実関係が正しいか、文章に矛盾がないか、内容にまで踏み込んで確認を行うのが「校閲」だ。

 画面上で編集された紙面は、ゲラ(試し刷り)となり、校閲記者の手に渡る。誤字脱字の修正を行う「校正」の作業だけでなく、事実関係が正しいか、文章に矛盾がないか、内容にまで踏み込んで確認を行うのが「校閲」だ。

 一つの紙面に対し、数人の校閲記者とデスク(校閲記者がチェックした原稿を最終的に確認するリーダー)によって、最低でも3回の校閲が行われている。何重もの確認体制をとり、ミスを防いでいるのだ。

 今回、キャンパる紙面もチェックする、校閲記者38年目の大ベテラン、渡辺さんに話を聞いた。

 渡辺さんが校閲記者を目指したきっかけは、毎日新聞を愛読していた学生時代。紙面を読んでいると、記事に誤植を見つけることが何度かあったという。「ひょっとして(自分は校閲記者として)やっていけるのでは?」と毎日新聞社を受けた。その見通しが当たり、1982年に校閲記者として採用され、それから校閲一筋だ。

 校閲記者はおのおので担当する紙面は決まっておらず、さまざまな記事を校閲する。政治、経済の硬派紙面からスポーツ、芸能など軟派紙面、そしてキャンパるもチェックしている。「いろいろなものに興味を持って、自分の中の引き出しを増やすことが大切」と語る。そうすることで、どんな内容にあたっても、対応できるという。

 文章中の言葉の使い方は「毎日新聞用語集」(表紙が赤いため通称赤本)に従って修正される。赤本は校閲記者にとって、バイブル的存在だ。

 さらに、内容の事実確認のため、インターネットや文献、辞書など、いくつもの情報にあたる。情報を選別し、積み重ねたものが反映され、事実として読者に提示されるのだ。

 言葉は時代の流れと共に、本来の意味に新たな意味が加えられるケースも少なくない。それを「間違い」とするのではなく、その用例の普及に応じて、変化を柔軟に取り入れていくことで「言葉が生きてくる」のだという。

 一つの面の校閲に費やす時間は、扱う内容の軽重によって異なるというが、キャンパる紙面は1時間ほどだそう。

 一字一句を読み込み、誤りを見つけ出す。実に根気のいる作業だ。「担当面を粘り強く、何度も読み返す我慢強さが必要。修正を重ねることでより良い紙面を作ることができる」。そういった姿勢が大事だと何十年もやってきて感じるという。

 最後に、キャンパる紙面の印象を聞いた。プロの記者の記事に対して、学生記者の記事は「内容の新鮮さや文章の勢いに若々しさを感じる」。一方で、やはり気になるのが「話し言葉」と「書き言葉」の混同だという。「食べれる」(ら抜き)、「いちばん最後に」(意味の重複)など会話ではつい使ってしまうが、活字ではこれらは明らかに誤りだとわかる。

 新聞に載せる言葉は、なるべく平易に、誰が読んでも違和感なく伝わる表現に直されている。この記事も渡辺さんに校閲を受けた。読者の皆さんの元に届くまでいくつの修正が行われただろうか。

 日々お世話になっている、校閲記者のすごさをあらためて知ったキャンパる記者であった。【津田塾大・畠山恵利佳】

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