2019/07/02 就活最前線

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VRによる面接体験を行う記者。リアルな映像に思わず手ぶりも=東京女子大学で

緊張の面接、VRがお手伝い 東京女子大、リアル動画導入

 2020年春卒業予定者の就職活動は、早くも終盤戦と言われる。そんな就職戦線の中、東京女子大(東京都杉並区)が、バーチャルリアリティー(VR)を使用した、採用面接動画を導入したという。3年生となり就活が気になり出した記者が取材した。【法政大・平林花、写真は早稲田大・廣川萌恵】


 VRを使用した採用面接動画とは、面接会場をVRで再現し、自分がその場にいるような臨場感を表現する仕組み。面接会場の独特な雰囲気にのまれ、思う通りに力を発揮できない就活生にもその場の雰囲気に慣れさせる効果がある。またVRはできる限り対面に近い状況を作り出すこともできる。講義形式になりやすいDVDとは違って、能動的で定着度の高い学習につながると考えられる。

 5月27日から本格導入された。VRを利用した就職支援は日本初の試みだという。

 導入のきっかけは、近年、就職活動時期が人によって異なる傾向にあること。同大のキャリア・センターでは、就職支援もそれとともに対応していくことが必要と考えた。しかし、同センターで行っている対人面接練習は予約が必要だ。そんな悩みをキャリア・センターが抱えていたところ、岡崎人事コンサルタントの岡崎浩二さん(38)からVRの利用を提案された。

 岡崎さんは長年キャリアカウンセラーを務め、同大で就職ガイダンスなどの行事も担当している。ドローンなどの最新技術にも精通していて、VRを面接練習に使う発想はそんな岡崎さんとキャリア・センターのつながりから生まれた。

答えの考え方表示

実際に面接を受けているようなVR画面=東京女子大キャリアセンター提供

 どのようにVR面接ができるのか、記者も実際に体験してみた。キャリア・センター資料室の一角に周りからは見えないように配慮されたブースが用意されている。中には机と椅子があり、机の上にはVRの操作方法や動画内容についてのマニュアルが置かれている。

 VRゲームでよくみかける顔を覆う機械を頭にとりつけ、手のひらサイズのコントローラーを持てば準備は完了。再生したい動画を選び自分のタイミングで再生する。選んだ動画には、面接官が並び面接が始まった。「自己PRしてください」「どんな社会人になりたいですか?」など、静まった会場で答える自分の声だけが響く。面接官の視線が本当に記者に向いているようで思わず背筋が伸びる。緊張感も再現され、そのリアリティーに驚いた。

 動画では質問の後に答えの考え方が字幕で表示される。模範回答になってしまわないように注意したという。

「最終」用まで

 現在、動画の種類は1次面接用、2次面接用、最終面接用がある。1次面接はやわらかく優しそうな若手社員、2次、最終と進むにつれて威厳や威圧感のある面接官へ変化していく。実際の面接では会社によって質問も面接官の雰囲気も異なる。そのため考えられる質問の頻出項目や雰囲気を再現した。キャリア・センター主任の村石隆造さんは「将来的には1人で練習できないグループワークやディスカッション、企業とのコラボを見据えている」という。

 「やれることは何でもやりたい」と村石さんは語る。VR使用ブースには、自由に感想がかけるノートや化粧崩れを防止するVR専用マスクも置いてある。常に学生の声に耳を傾け細かいところまで考えているキャリア・センターの姿勢が伝わってきた。

 就活だけでなく就職支援も時代とともに変わり進化している。これから先どんな新しい就活支援ツールが出てくるのだろうか。記者も大いに活用していきたい。

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