2019/06/25 なにコレ!?

ジェンダー考えよう 実際に直面した29の問答集
一橋大ゼミ生たちが執筆・出版

 学生たちによって執筆された「ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた--あなたがあなたらしくいられるための29問」(明石書店)が21日、出版された。【東洋大・佐藤太一、写真は一橋大・川平朋花】


 執筆したのは、一橋大でジェンダー(社会的性差)論を研究する、佐藤文香教授のゼミナールの学生たち。内容はジェンダーに関するQ&A(質問と回答)集。ジェンダーを学ぶ学生たちが、友人・知人や家族から実際にぶつけられた質問をもとにまとめられた。

 作業が始まったのは2017年。ジェンダー論のゼミに所属するがゆえに投げかけられる、「どうしてフェミニストはミスコンに反対するの?」「女性専用車両って男性への差別じゃない?」といった問いに、頭を悩ますことが多かった学生たち。

 ジェンダーに関する視点の違いのために、理解が得られないことや、議論がけんか別れに終わってしまうこともあったという。そんなゼミ生たちの様子を見ていた佐藤教授が、毎年同じように頭を悩ますよりも、Q&A集をつくって後輩に引き継いでいったらどうか、と提案したことが作成のきっかけとなった。通常のゼミ活動の後に、毎週数時間の議論を行って編集していった。

議論広げていきたい

 アンサーは一つのクエスチョンに対して、ホップ、ステップ、ジャンプと3段階に分けてまとめられている。ジェンダーという言葉の意味すらよく知らない人から、研究に関わる人まで、幅広い層に手に取ってもらえるよう配慮した。

 特にホップの段階では、重要な点を分かりやすく、端的にまとめる必要があり、苦労したという。知識や意見を押し付けるのでなく、議論を一般に広げていきたいという意図からだ。学部生の時から編集の中心となった前之園和喜さん(同大大学院社会学研究科修士1年)は「ここにまとめたアンサーは唯一の正解ではない。違う意見があれば発信して、議論が広がってほしい」と話す。

 大学生が普段の生活でぶつけられた質問だけあって、ミスコンや女子校の意義、大学による女子学生のみへの家賃補助など、学生にとってなじみやすいクエスチョンが並ぶ。「友達だと思ってたのに(同性から)告られた……誰かに相談していい?」という項目は、15年に一橋大で起こったアウティング事件(恋愛感情を告白した同性にそれを同意なく暴露され、心身に不調をきたした学生が転落死した事件)をもとにしている。各章の間には、学生自らの体験をもとに、「私」を前面に出して執筆したコラムも掲載されている。

 普段の生活でぶつけられる質問は、必ずしも論点がはっきりしているわけではない。大学生にとって身近なミスコンについても「出るのは個人の自由では?」「ミスターコンもやれば平等では?」とさまざま。質問の前提意識を考えて趣旨を解きほぐし、どのような要素をアンサーに盛り込んでいくべきかを検討していった。

 メインのターゲットにしたのは、大学生や高校生といった若い世代。ジェンダーやセクシュアリティーの問題について、運動を一時的なものにしないために、ジェンダー研究の成果を若い世代が継承していく必要があると、前之園さんと共に編集の中心となって進めた児玉谷レミさん(同研究科修士1年)は話す。

 今回、長い時間をかけて出版にまで至ったが、これで終わりではない。研究が進み、時代が進んでいけば、それに合わせて改訂していく必要もあるという。

 ジェンダーに対する知識が広まると同時に、誤解や偏見も広がっている。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では異なる意見のぶつけ合いになり、なかなか議論にならない光景もある。同書はそんな誤解を解消し、議論を積み上げる土台作りに貢献してくれることだろう。

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