2019/06/11 写Now

五月祭に木質パビリオン

ユニークな構造物に、子供たちも楽しそうに遊ぶ「Holz-horn」=東京大学弥生キャンパスで

 東京大学本郷・弥生キャンパス(東京都文京区)で5月18、19の両日に開催された五月祭。大勢の人でにぎわう中、弥生キャンパスには、二つの木造オブジェがひときわ目立っていた。農学部木質材料学研究室が制作した「木質パビリオン」だ。

 同研究室は2004年から毎年、五月祭の休憩スペースとして木質のパビリオンを展示している。

 制作するのは学内コンペで選ばれた2案のみ。今回勝ち抜いたのは、林研太朗さん(修士2年)が設計した「Holz-horn(ホルツホルン)」と、小西佑佳さん(同)の「木花瓶(もくかびん)」。どちらも上部に向かって広がっていく形状のユニークさが、高く評価された。

 最も票を集めた林さんの「Holz-horn」は、ドイツ語で「木の角」という意味。2本の角が伸びていくような形から名付けた。高さ4メートルほどの角を作り出す大胆な曲線は、16個の平面のユニットを少しずつ傾けながら並べることで表現。二つの角をなす部材が左右に引っ張り合うことで、バランスを保つ設計に。接合部を減らし、内部で遊べるほどの広い空間を生み出した。

 「木花瓶」の特徴は、花びらのように広がる屋根。入り口を作り、中に入れる仕掛けを施した。考案した小西さんは「コンクリートと違って、構造や力の流れを見てわかることが木の良さ」と話す。設計者は、現場の指揮を執る早川潤さん(修士1年)、本多航さん(同)2人の棟梁(とうりょう)と共に、二人三脚で設計を詰めていった。構造計算で木の重みや揺れを算出し、倒れないための対策を何重にも講じた。

 約2週間で木材の加工準備をし、施工日はたったの一日。普段の実験で使う部品などの知識を活用できるのは、同研究室の学生ならではの強みだ。棟梁を中心に、声を掛け合いながら組み上げていく。完成時には設計者の林さん自身「やっぱりかっこいいな」と満足そうに見上げた。

 五月祭当日。パビリオンが、涼しげな影を映し出した。通りすがる人々は足を止めて眺めたり、中に入ってみたりと興味津々の様子。子供たちも駆け回って遊ぶなど、ほほ笑ましい空間を作り出していた。【上智大・川畑響子】

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