2019/05/14 すたこら

泥だらけの人生

 「早いうちに挫折しといたほうがいいよ」。中学生のときだったか、そんなことを言われた。もう誰の言葉かも覚えていないのに、いまだに頭の片隅にある。

 小学校の頃から成績は悪くなかった。中学受験もあっさりと合格。平穏に中高と過ごし、大学も第1志望の学校へ。順風満帆な人生だ。

 平穏無事なのはよいことだと思いつつ、時折あの言葉を思い出す。「挫折したほうがいい」。挫折を知らないということは挑戦を避けてきたということに違いない。こんな人生から何を絞り出せば良いのか。就職活動を始めたときはそう思っていた。

 しかし同じように就職活動に励む高校からの友人やキャンパるの仲間たちと話すうちに、自分でも忘れていた出来事や気がついていなかった感情が引き出された。

 高校の部活動では運営が難航し、毎日泣きながら帰っていたこと。キャンパるの取材で強行スケジュールを組んで、同期と夜な夜な知恵を絞ったこと。過去によく目をこらせば、挫折もあった。挑戦もあった。私は決して、何もない、真っ白な存在なんかじゃない。泥臭い部分をなかったことにして私を何でもない存在にしていたのは、他でもない自分自身だった。

 「奇麗な経歴ですね」。履歴書を手にした面接官にそう言われたとき、ぐっと身構えた。あの言葉を思い出す。でも今は、もう自分が「奇麗」じゃないと分かっている。これからは泥だらけの私とも一緒に生きていくのだ。【一橋大・川平朋花】

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